【小児科医からのメッセージ】「医療的ケア」が必要と言われたら?パパママに知ってほしい基本と安心のヒント
この記事の3行まとめ
- 「医療的ケア」とは、たんの吸引や経管栄養など、日常生活の中で継続して必要となる「医療的なケア」です。
- 必要なケアも背景も十人十色。「うちの子だけ……」と誰かと比べたり、ご自身を責めたりしないでください。
- 2026年度は、18歳を超えた後も適切な支援につながるための取り組みが拡充されています。「全部親がやらなきゃ」と思わず、周りをどんどん頼りましょう。
病院で、
「お子さんには、これから医療的ケアが必要になります」
と説明されたとき、親御さんが不安になるのは当然のことです。
「ちゃんと自分にできるのだろうか」
「家に帰ってから、どうやって生活するんだろう」
「保育園や学校には行けるのかな」
いろいろな心配が、一気に押し寄せてきますよね。
でも、最初からすべてを理解して、完璧にこなせる必要はありません。
医療的ケアは、ご家族だけで背負い込むものではないからです。
今回は、これから医療的ケアとともに生活していくお子さんとご家族に向けて、小児科医として「まず知っておいてほしいこと」をお伝えします。
1.そもそも「医療的ケア」ってどういうこと?
「医療的ケア児」というのは、特定の病気の名前ではありません。
法律では「医療的ケア」を、人工呼吸器による呼吸管理や喀痰吸引などの医療行為としています。そして、日常生活や社会生活を送るために、恒常的に医療的ケアが必要な子どもを「医療的ケア児」としています。
実際には、
- たんの吸引
- 人工呼吸器の管理
- 在宅酸素療法
- 鼻からのチューブや胃ろうからの栄養
- 導尿
など、お子さんの状態に応じてさまざまなケアがあります。
ここで、ぜひ知っておいてほしいことがあります。
「医療的ケアが必要=ずっと病院にいなければならない」というわけではありません。
必要なケアを生活の中に上手に組み込みながら、お家で過ごしたり、保育園や学校に通ったり、家族と一緒にお出かけしたりすることもできます。
医療的ケアがあっても、その子らしい生活を送ることはできます。
2.具体的にどんなケアをするの?
お子さんの状態に合わせて、本当にさまざまな種類があります。
呼吸のサポート
たんの吸引、人工呼吸器、在宅酸素療法、気管切開部の管理などがあります。
栄養のサポート
口から十分に食べることが難しい場合には、鼻からのチューブや胃ろうなどを使って栄養や水分を入れることがあります。
排泄のサポート
自分で尿を出すことが難しい場合には、管を使って尿を出す「導尿」などが必要になることがあります。
言葉だけを見ると、
「こんなこと、私に毎日できるの?」
と不安になりますよね。
でも、最初からできなくて当たり前です。
退院する前には、主治医や看護師などが、ご家族のペースに合わせて一緒に練習していきます。
わからないことは、何回聞いても大丈夫です。
「もう一度教えてください」と言っていいんです。
3.「どうしてうちの子が……」背景は本当に人それぞれです
医療的ケアが必要になる背景は、お子さんによってまったく異なります。
生まれつきの病気がある子、早く小さく生まれたことが影響している子もいれば、成長してからの病気や事故などがきっかけになる子もいます。
同じ「胃ろうを使っている」というお子さんでも、病気や発達、生活の様子はまったく違います。
だから、
「うちの子だけ大変なのでは……」
と、他のお子さんと比べすぎる必要はありません。
そして何より、
医療的ケアが必要になったことを、ご自身のせいにする必要はありません。
4.「ケアが多い=重度」ではありません。比べなくて大丈夫!
ここは、とても大切なポイントです。
医療的ケアの種類や数だけで、お子さんの重症度を判断することはできません。
普段は元気に走り回っているけれど、胃ろうを使っているお子さんもいます。
一方で、複数の医療機器を使いながら、穏やかに毎日を過ごしているお子さんもいます。
また、「医療的ケア児」と「重症心身障害児」は同じ意味ではありません。
医療的ケアが必要でも、運動や知的発達に大きな遅れがないお子さんもいます。
「うちはケアが少ないからマシ」
「あの子より機器が多いから大変」
と、単純に比べる必要はありません。
大切なのは、ケアの数ではなく、お子さんがどんな生活をしたいのかです。
5.「私が全部やらなきゃ」はNG!チームで育てましょう
医療的ケアが始まると、
「自分が体調を崩したらどうしよう」
「もう外出できないの?」
「保育園や学校はどうなるんだろう」
と不安になるのは自然なことです。
だからこそ、できるだけ早い段階で「頼れる味方」を作っておくことが大切です。
迷ったときの主な相談先
- かかりつけの小児科医・主治医
- 訪問看護ステーション
- お住まいの地域の医療的ケア児支援センター
- 医療的ケア児等コーディネーター
- 保育・教育・福祉の相談窓口
医療的ケア児の支援は、医療だけで完結するものではありません。
医療、福祉、保健、保育、教育など、さまざまな立場の人が連携して、お子さんとご家族の生活を支えることが大切です。
「困ってから」ではなく、
「困る前に相談しておく」
のがコツです。
「ちょっと話を聞いてほしい」くらいでも、立派な相談の理由になりますよ。
6.大きくなったらどうなるの?「18歳の壁」のお話
「大きくなったら、医療的ケアはどうなるの?」
これも、ご家族がとても気になるところですよね。
成長に伴ってケアが必要なくなることもあれば、大人になっても継続する場合もあります。
そして、医療的ケアのある子どもたちにとって、高校卒業や18歳前後は大きな環境の変化の時期です。
これまで利用してきた子ども向けの支援から、成人期の保健医療サービスや障害福祉サービスなどへ移行していく必要があるため、「18歳の壁」と呼ばれる課題が指摘されてきました。
実際、医療的ケア児支援法でも、18歳に達した後や高等学校等を卒業した後も、適切な保健医療サービスや福祉サービスを受けながら生活できるよう配慮することが基本理念として明記されています。
さらに2026年度は、医療的ケア児等とその家族への地域支援について、18歳を超えた後も適切な障害福祉サービスなどにつながるまでの支援を含め、取り組みが拡充されています。
つまり、
「18歳になったら、突然すべての支援が終わる」
という方向ではなく、成人後の生活へ切れ目なくつなげていく仕組みが少しずつ整えられています。
もちろん、利用できるサービスや支援体制は地域によって異なります。
だからこそ、18歳になる直前ではなく、少し早めから「大人になったらどうするか」を一緒に考えておくことが大切です。
7.よくあるご質問
Q.医療的ケアは、一生続くのでしょうか?
今の時点で「この先ずっと」と決めつける必要はありません。
お子さんによって、成長とともにケアが不要になることもあれば、成人後も続くこともあります。
先の見えない未来をすべて心配するより、まずは今のお子さんに必要なことを、一つずつ考えていけば大丈夫です。
Q.家族だけで頑張らないといけませんか?
いいえ。家族だけで抱える必要はありません。
お子さんの生活には、医療、福祉、保健、保育、教育など、さまざまな専門職や支援機関が関わります。
周りにSOSを出すことは、「弱さ」ではありません。
お子さんとご家族の生活を守るための、大切な一歩です。
最後に、小児科医から伝えたいこと
「医療的ケアが必要です」と言われた直後は、不安でいっぱいになると思います。
でも、最初からすべてを背負わなくて大丈夫です。
一つずつケアを覚え、少しずつ生活のリズムを作り、
「わが家らしいやり方」
を見つけていけばいいのです。
そして、忘れないでほしいことがあります。
医療的ケアがあることが、お子さんの人生のすべてではありません。
お子さんには、遊ぶこと、学ぶこと、友達と過ごすこと、家族と出かけること、笑うこと、好きなことをする時間があります。
医療的ケアは、その生活を支えるための大切な一部です。
ご家族だけで頑張る必要はありません。
困ったときには、主治医や看護師、医療的ケア児等コーディネーター、地域の支援センターなどに遠慮なく相談してください。
一人で抱え込まなくて大丈夫です。
私たちも一緒に、お子さんとご家族の「これからの生活」を考えていきます。
参考情報
こども家庭庁「医療的ケア児等とその家族に対する支援施策」
厚生労働省「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」

